Webアプリ開発事始 第2回

TCP/IPネットワークとWebアプリケーションの基礎(2)
~クライアント・サーバー方式とTCP/IPプロトコル
長谷川裕行
有限会社 手國堂

ネットワークの原点

まず、ネットワークとはどういうものか――という「超基本事項」について、簡単に把握しておきましょう。出発点は、汎用機の利用形態にあります。


- ネットワークの基本をおさらいする -

インターネットやイントラネットがどのようなものか、今さら説明するまでもないでしょう。前回簡単に説明したように、その基本はTCP/IPプロトコルによるLANです。これを、本稿では「TCP/IPネットワーク」と呼んでおきます。

では、TCP/IPネットワークとはどのようなものか? それ以前に、そもそもLANとはどういうものか? ――分かっているはずなのだけれど、なかなかうまく説明できないものです。

特に「アプリケーション実行環境としてのネットワーク」という捉え方をした場合、これまでのように「資源の共有」という一言では片付けられないほど、様々な形態が生まれています。どのような資源をどのような方法で共有しているのかまで、押さえておく必要がありそうです。


- ネットワークの原点 -

ネットワークは、正しくは「コンピュータ・ネットワーク」といい、「コンピュータ同士を接続したもの」と捉えられています。WindowsやMacintoshのネットワークもインターネットも、その意味ではまったく同じです。

ネットワークをもう少し厳密に定義すると、コンピュータ同士を信号線や無線などの信号伝送手段によって接続し互いに情報をやり取りできるようにした仕組みということになるでしょう。

では、その原点はどこにあるのでしょう?

パソコンやインターネットが当たり前になった現在では、「汎用機(メインフレーム)」「ホスト方式」といった言葉をあまり聞かなくなりました。しかし消えてしまった訳ではありません。汎用機もそれを使ったネットワークも、確実に我々の生活を支えてくれています。


- ホスト方式のネットワーク -

汎用機を使ったネットワークは、ホスト方式と呼ばれます。汎用機を中心に据え、そこにケーブルを介してキーボードなどの入力装置やディスプレイなどの出力装置が複数つながった形態です。

中心となる汎用機をホスト・コンピュータと呼び、入出力装置はホスト・コンピュータの管理するネットワークの端に位置するため、端末装置と呼ばれます。「端末」という言葉は、パソコンでも用いられます。本体を中心に、そこから一番制御の遠い場所(=人間に近い場所)にあるため、terminal(端・終端)と呼ばれているのです。

この言葉から分かるように、ホスト方式ではホスト・コンピュータが処理を一手に引き受ける形となります。

TCP/IPネットワークでは、ネットワークを構成する各機器をホストと呼びますが、ここで言うホストは、ネットワークの中心機構です。混同しないようにしましょう。
図1:ホスト方式のネットワーク



コンピュータの階級

汎用機とは、事務計算、技術計算、データベース処理など何でもこなす文字通り汎用のコンピュータで、これがいわゆる「コンピュータ」です。

汎用機より大規模で科学・技術系の演算を高速にこなすものをスーパーコンピュータ、汎用機より小型でネットワーク管理などにも用いられるものをミニコンピュータ、1人が1台を操作できる高性能機をワークステーション、さらに個人用として使えるものをパーソナルコンピュータ、他の機器に埋め込まれるボードをマイクロコンピュータ――などと、かつてはコンピュータの階級(?)分けが明確でした。

今は、汎用機やスーパーコンピュータは別として、それより下に位置するコンピュータの境目が曖昧になっています。ミニコンピュータは、DEC(当時の社名)のPDPというコンピュータで使われた名称で、それまで高価で一般企業が手を出せなかった汎用機を小型・低価格にし、一気に市場に広めたという功績を持っています。

しかし、DEC社の消滅(Compaq社に吸収合併)と共にミニコンピュータというカテゴリも消えた――という人もいて、この名称自体が宙に浮いているのも確かです。ただ、IBM社のAS/400はワークステーション以上汎用機未満であり、これはカテゴリ上ミニコンピュータだと言えます。他に、事務処理向けのスモールコンピュータという呼び方もありました。

パソコンとワークステーションの境目も、もうほとんど無意味です。ゲーム機に埋め込まれたチップでLinuxが動いたり、冷蔵庫やテレビにIPアドレスを割り振ろうというご時世ですから、コンピュータという“何でもこなす計算機”の種類分け自体が、あまり意味のない時代になったのかもしれません。


- 一極集中型の管理機構 -

ホスト方式では、ディスクやメモリ、CPUなどの中枢的ハードウェア資源はすべてホスト・コンピュータの管理下に置かれます。ソフトウェアもホスト・コンピュータのメモリ上で動作します。簡単に言えば、端末装置を介して、1台のホスト・コンピュータを 全員で共同利用していることになります。

この形態の典型例は、銀行や郵便局のオンラインシステムでしょう。各店舗に設置されたATM(現金自動預払機)やCD(現金自動支払機)、カウンターの中で職員が操作する各種装置などは、すべて計算機センターで稼働しているホスト・コンピュータの端末装置です。

ホスト・コンピュータは1台とは限りません。多くの場合、複数の汎用機が稼働しています。それらはケーブルでつながれ、協調して動作しています。場所が離れていることもあります。しかし、一般に言うネットワークのイメージではなく、それらは総体として1つの機能を提供する巨大な装置と見ることができます。


- 端末は入出力装置 -

これもあまり耳にしなくなった言葉ですが、パソコン通信もホスト方式ネットワークの典型です。ユーザーは各自のパソコンで通信ソフトを起動し、電話回線を使ってパソコン通信事業者の管理するホスト・コンピュータに接続します。

通信ソフトは各ユーザーの操作するパソコン上で稼働していますが、その役目は「ホストへコマンド(命令)を送り、ホストの処理結果を出力する」だけです。操作にパソコンを使うためピンと来ませんが、このときパソコンは独自の処理能力を持たない「単なる端末装置」となっています。ネットワーク内の情報伝達処理は、すべてホストの側で管理するからです。

先述したATMやCDにしても、それぞれ独自のソフトウェアが稼働して利用者とのやり取りを行いますが、それはホスト・コンピュータの能力を利用するための準備にすぎません。最終的な処理は、すべてホストの側で行われます。


- 目次 -
ネットワークの原点
ネットワークの基本をおさらいする
ネットワークの原点
ホスト方式のネットワーク
コンピュータの階級(コラム)
一極集中型の管理機構
端末は入出力装置
クライアント・サーバー方式のネットワーク
ネットワークと資源の共有
TCP/IPプロトコルの基本
あとがき

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