Webアプリ開発事始 第23回

WebサイトとWebアプリのデザインを考える(1) 長谷川裕行
有限会社 手國堂

ユーザーを意識する

Webサイトであれアプリケーションであれ、作ったものは誰かが扱うことになります。扱う人をユーザーと言います。一度作って表に出てしまえば、作った側ではなく使う側、ユーザーの都合が最優先されます。


- アプリは「手段」でしかない -

プログラムにはいろいろな種類がありますが、特にアプリケーション・プログラム――いわゆる「アプリケーション」では、ユーザー・インターフェイスが非常に重要になります。なぜなら、ユーザーは「そのプログラムを使うための明確な目的」を持っているからです。

例えばワープロを使うユーザーは「文書を作成する」という目的を持っています。さらにそれが「特定の業務処理のためのアプリケーション」なら、目的はより明確になります。在庫管理のためのアプリケーションを操作するユーザーは、ある商品の入庫や出庫の数量を入力したかったり、ある商品の現在の在庫数を知りたかったりします。

パソコンやアプリケーションを使うことは目的を達成するための手段であって、それらはあくまで二義的な存在です。ユーザーが本当にしたいことは、手段であるパソコンやアプリケーションの操作ではありません。つまり、ユーザーの目指す結果(入庫した商品の数量を入力することや、現在の在庫数を知ること)が重要なのであって、パソコンも在庫管理プログラムもそのための「手段」でしかないということです。


- 手段は「透明」なほどよい -

「手段」は透明に近いほど優れています。「透明」とは、それを扱う者にその存在を感じさせないという性質です。例えば「旅行に行きたい」とします。あなたの目的は旅行先で日常と異なる環境に自分を置き、景色を眺めたり温泉に入ったり、食事をしたり買い物をしたりすることであって、そこへ至る過程――自家用車で高速道路を走ったり、駅で電車を待ったりすることはあくまで二義的です。

すると、移動のための手段はできるだけ簡単で、移動していることを意識しないくらいの方が、到達地での体験を満喫できます。

もちろん、自動車を運転することや電車に乗ることが好きな人もいるでしょう。その場合、目的地に着いてからの行動より、移動手段の方が目的となってしまうかもしれません。その場合は、移動することを目的と捉えてもよいでしょう。すると、自動車の運転(ハンドルやペダルの操作)に意識を集中するより、できるだけ楽に運転したいと思うでしょう。

中には、その面倒な運転操作が楽しい人もいるはずです(私もそうです)。そうなると、料金所や一般道路の信号で止まったりすることが、煩わしくなります。機械を操作したいからです。パソコンでも、パソコンそのものを操作することに喜びを感じる人もいるでしょう(私は違いますが……)。そのような場合は、自分がパソコンを扱える環境となるに至るまでの、日常の行動――食事やトイレなど――を煩わしく感じるかもしれません。

いずれにせよ、何らかの目的を達成したいと思っている人には、そこに至る手段は「煩わしいもの」となります。誰だって、手早く、楽に結果を得たいものです。


- 主役はユーザー -

自分の作った(プログラムやWebサイトという)「作品」が「透明」になるべきだということに、疑問を抱く人もいるでしょう。しかし技術とは、本来そういうものです。例えば絵画や音楽でも、我々は技術そのもに感動するのではなく、技術を駆使した結果、表に現れた絵や演奏の伝える内容に感動するのです。技術は、現れた結果を支えるものでしかありません。

もちろん、高度なテクニックに感心したり感動したりすることもあると思いますが、それはかなり特殊な見方でしょう。本来は、「技術によって伝えられたもの、あるいは伝えられようとしているもの」こそが受け止められるべきです。

この「技術を透明にするための手段」が「デザイン」です。ボリュームつまみを右に回せば大音量になり、左向きの三角ボタンを押せば再生画像は逆戻りする――といったように、「ユーザーがごく当たり前に感じる状況」を内部の機能とうまく結び付けることが、デザインの基本です。

そのためには「ユーザーはどのような人たちなのか?」「我々は、ユーザーに何を伝えたいのか?」を明確にしなければなりません。主役はユーザーです。ユーザーにうまく扱ってもらわなければ、技術の意味はありません。


- リーダーの舵取りが重要 -

ここで問題となるのが、想定したユーザーが自然と感じる操作感をデザインするための知識や感性と、定められた機能を開発するために必要な知識や技術とは、一個人の中に必ずしも同居しない――ということです。

Webサイトの作成は一般のアプリケーション開発とは異なり、デザインと実質的な機能部分との線引きが難しい領域です。一般のアプリケーション開発なら、使用を定めていわゆるユーザーインターフェイスを設計し、それに合わせて内部の機能をプログラミングする――という手順で、前半のデザイン部分と後半のプログラミング部分とを、異なるメンバーに委ねることが可能です。

ところがWebサイトの開発では、まず作成するWebページそのものが、テキストや画像をレイアウトした「デザインの塊(かたまり)」です。そしてその中の部分部分に、表面に現れる(ユーザーの目に直接触れる)インタラクティブな処理がプログラムとして埋め込まれることになります。

またサーバーサイド・アプリケーションでは、入力と出力を担うWebページ(デザインの重要な部分)が、サーバー側のプログラム(機能が重視される部分)と密接に関連しており、プログラムの側で処理結果を提示するHTMLを記述しなければなりません。

このように、特に大規模なWebサイトの開発では、デザイナーとプログラマーの領域がクロスオーバーし、共同で、時には入り乱れながら、作業が進みます。全体を取り仕切るプロジェクト・マネージャやSEの舵取りが、非常に重要になるでしょう。


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