第34回
変数の通用範囲～自動変数と静的変数／局所変数と広域変数
局所変数と広域変数自動変数と静的変数──関数内で消滅する変数とプログラムの実行中存在し続ける変数──は、変数が『いつ生成されて、いつ消滅するのか？』を規定するものです。これとは別に、変数には局所変数と広域変数という分類があります。変数を参照できる範囲局所変数は「ローカル変数」とも呼ばれ、『一定の処理範囲内だけで参照できる変数』です。広域変数は「グローバル変数」とも呼ばれ、『複数の処理範囲をまたいで参照できる変数』です。局所変数は、関数の中で宣言された変数です。関数の中で宣言された変数は、自動変数であっても静的変数であっても、宣言された関数内からのみその値を参照でき、他の関数から参照することはできません。 一方広域変数は『関数の外』で宣言され、同じソースファイル中のすべての関数から値を参照できます。 広域変数は関数の外で宣言されるため、一般には宣言と同時に初期化します。また、main関数の中で他の関数を呼び出す前に初期化することもできます。 プログラムで試す広域変数と局所変数の違いをプログラムで試してみましょう。リスト2では、int型の変数aが広域変数で、main関数より先に（すべての関数の外側で）宣言され、0で初期化されています。main関数では関数countを10回呼び出しています。count関数の中ではint型の局所変数bを宣言し、0で初期化しています。 その後、先のリスト1と同じく2つの変数の値を表示し、続いて両者の値を1増加しています。 実行すると画面2のようになります。count関数内で宣言されている局所変数bは呼び出されるたびに初期化されるため、常に0となっています。一方、広域変数aはcount関数の外で宣言されていますがその値を参照できるため、count関数で値を表示したりインクリメントしたりできます。 リスト2：グローバル変数とローカル変数の働きを確かめる(ex3402.c) #include <stdio.h>
int a = 0; /* 広域変数の宣言と初期化 */
void count(void); /* 関数の宣言 */
int main(void)
{
int i;
/* countを10回呼び出す */
for (i = 0; i < 10; i++) {
printf("%d : ", i+1); /* 呼び出し回数 */
count();
}
return (0);
}
/* 呼び出された回数を表示 */
void count(void)
{
int b = 0; /* 局所変数の宣言と初期化 */
printf("global -- %d / local -- %d\n", a, b);
a++; /* 広域変数を1加算 */
b++; /* 局所変数を1加算 */
}
画面2：ex3402.exeの実行結果 C:\CLANG\EXE>ex3402 1 : global -- 0 / local -- 0 2 : global -- 1 / local -- 0 3 : global -- 2 / local -- 0 4 : global -- 3 / local -- 0 5 : global -- 4 / local -- 0 6 : global -- 5 / local -- 0 7 : global -- 6 / local -- 0 8 : global -- 7 / local -- 0 9 : global -- 8 / local -- 0 10 : global -- 9 / local -- 0 C:\CLANG\EXE> このように広域変数は、ソースファイル内の関数から自在に参照できます。しかし、たとえばmain関数の中で次のようにしてcount関数内で宣言された変数bを参照することはできません。 printf("b = %d /", b);
コンパイル時に「'b'という識別子が定義されていない」というエラーが発生します。変数bは、main関数とは別の処理単位である関数count内で宣言された変数だからです。 広域変数の多用はNG！広域変数はどこからでも参照できるため、関数内で消滅する局所変数より便利な気がします。そのため、プログラムで必要なデータをすべて広域変数としてしまう人もいるようです。しかし、広域変数は「どの処理（関数）がその値を書き換えたのか」が見通しにくくなるため、プログラムの構造を把握することが困難になり、デバッグや仕様変更の際に苦労します。 Cでは、関数同士のデータのやり取りは引数と戻り値で行い、広域変数の使用は極力控える――というのがセオリーです。 ＊
変数には、 宣言された処理単位（関数）内でのみ存在する自動変数 処理を終えても存在して値を保持し続ける静的変数 の2種類があります。これは、変数の『通用期間』に関する違いです。 さらに 宣言された処理単位（関数）内でのみ参照できる局所変数 処理単位の外からでも参照できる広域変数 の2種類があります。これは、変数の『通用範囲』に関する違いです。 |
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