Webアプリ開発事始 第2回

TCP/IPネットワークとWebアプリケーションの基礎(2)
~クライアント・サーバー方式とTCP/IPプロトコル
長谷川裕行
有限会社 手國堂

クライアント・サーバー方式のネットワーク

インターネットは世界中のネットワークの集合体であり、個々のネットワークはクライアント・サーバー方式で稼働しています。クライアント・サーバー方式ネットワークの特徴を知っておきましょう。


- ホスト方式の長所と短所 -

ホスト方式は、言ってみれば古典的なネットワークです。最も安全・確実である半面、柔軟性に欠けるのは否めません。金融機関や保険業界でこの方式が採用されている理由には、古くからコンピュータによる処理が行われていたということもありますが、何より安全だからです。

ホスト・コンピュータの保守さえしっかり行っておけば、(通信回線や端末のトラブルは別として)ネットワーク全体がダウンすることはありません。個々の端末装置は、壊れたら取り替えるだけで済みます。ソフトウェアの保守も、すべてホストの側で行えます。外部からの不正侵入も、限りなくゼロに近くなります。

ただ、万一ホスト・コンピュータが停止したら、ネットワークは完全に機能を失ってしまいます。新たな機能を追加する場合も、ホストの管理機構そのものを見直さなければならなくなります。ようするに「ホストこけたらみなこけた」ということで、堅牢さは柔軟性の乏しさと表裏一体なのです。


- クライアント・サーバー方式 -

ホスト方式の持つ問題を解決する方策として、クライアント・サーバー方式のネットワークが生まれました。

クライアント・サーバー方式では、ネットワーク内のコンピュータはハードウェア資源を提供するサーバーと、それを利用するクライアントとに分かれます。1台のサーバーがすべての資源を提供する形もあれば、数台のサーバーが資源を分担して提供する形もあります。

また、クライアントも独自に処理能力を持つコンピュータであり、ホスト方式のように純然たる端末から一歩進んで、サーバーから得た情報を独自に加工し、それを別のサーバーへ送る――といったこともできます。

クライアント・サーバー方式におけるクライアント・コンピュータは単なる入出力装置ではなく、ネットワーク内での情報伝達に必要な「情報の加工」を行うことも可能です。
図2:クライアント・サーバー方式のクライアントは、
単なる入出力装置ではない



- 拡張・拡大が自在になった -

クライアント・サーバー方式は、汎用機の機能を凝縮したミニ・コンピュータの登場によって実現しました。汎用機に比べて安価なミニ・コンピュータを数台配置し、それぞれにサーバーとしての役割を分担させることで、機能の拡張や規模の拡大が容易になったのです。

さらにワークステーションと呼ばれる小型コンピュータが登場すると、それをサーバーにしたりクライアントにしたり…と、自在にネットワークを発展できるようになってきました。それを可能にしたのがUNIX※1 というOSであり、Ethernet(イーサネット)※2 という信号伝送規格です。

そこから先は、もう説明するまでもないでしょう。クライアント・サーバー方式をどんどん発展させ、さらに他のクライアント・サーバー方式ネットワークと連携させることで、ネットワークはどんどん増殖を始めました。

※1 UNIX:1969年、米AT&Tベル研究所で開発されたマルチタスク、マルチユーザーOS。当時登場したばかりのミニコンピュータ用として開発され、1980年代に入ってワークステーション用OSとして広まった。インターネットで用いられる多くの決まり事は、そのほとんどがUNIXから生まれている 

※2 Ethernet:1973年、米ゼロックスのコンピューターサイエンス研究所で開発された、ネットワークの伝送路に関する規格。IEEE 802.3で定められている標準伝送速度10Mbpsの規格とほぼ同じ


- 一元管理から分散処理へ -

クライアント・サーバー方式の特徴は、ホスト方式の「一元管理」「一極集中管理」による欠点をカバーできることです。大量の外部記憶装置を搭載したコンピュータにファイル管理を任せ、高速な演算機能を持ったコンピュータに複雑な計算を委ねる――といった形で、処理を分散できます。

さらに、大量の外部記憶装置を持つコンピュータを複数台配置し、それぞれにデータを分散して保管させたり、データベースを管理するコンピュータ、アプリケーションを管理するコンピュータ、通信基盤やユーザーの管理を行うコンピュータなどなど、ハード/ソフトに関わらず機能を分散できます。

インターネットの各種サービスを見れば、その意味はお分かりいただけるでしょう。


- 組み合わせ自在 -

このように、クライアント・サーバー方式の考え方では提供する側と利用する側の双方が独自の処理能力を持つコンピュータであることが重要です。

これは、ソフトウェアのクライアント・サーバー方式でも同じことです。Webサーバーも独自のソフトウェアなら、Webクライアント(ブラウザ)も独自のソフトウェアです。両者の間にはHTTP※3 プロトコルという伝達の取り決めが存在するだけであって、あるWebサーバーには特定のブラウザしか使えない――ということはありません。

この一定の取り決めに従っていれば、組み合わせは自在という点が、クライアント・サーバー方式の大きな特徴です。

※3 HTTP:HyperText Transfer Protcol。HTML形式のハイパーテキスト・データを転送するための規約


- 目次 -
ネットワークの原点
クライアント・サーバー方式のネットワーク
ホスト方式の長所と短所
クライアント・サーバー方式
拡張・拡大が自在になった
一元管理から分散処理へ
組み合わせ自在
ネットワークと資源の共有
TCP/IPプロトコルの基本
あとがき

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